異常な日本のマスコミ

安倍晋三首相が8月28日、突然、辞任を表明した。持病である潰瘍性大腸炎が再発し、国民の負託に応えられなくなった、というのが理由である。第二次安倍内閣発足以来7年8か月に及ぶ長期政権も病には抗しきれなかったのである。

 この長期政権下で安倍首相が成し遂げた業績は計り知れないほど大きい。民主党政権下で失速した日本経済を立て直し、外交の力で国際的にも日本の存在感を際立たせた。歴史に残る宰相だったといえる。

 ただ残念だったのは日本の一部マスコミとの闘いがあったことである。なかでも朝日新聞は安倍を首相の座から引きずり降ろすことを社是としていた。モリ・カケ問題、桜を見る会問題などはこの社是に基づき懸命に掘り起こされたといえる。

 「社是である」と公言した故・若宮啓文朝日新聞主筆に何故なのか尋ねたことがある。イデオロギー的に相容れないというのは判ったがもう一つ彼が口にしたことは「記事に文句をつけすぎる」ということだった。確かに安倍首相は、父親の晋太郎氏の秘書官だったころから執拗に注文をつけるとして有名だった。おそらく潔癖な性格によるものだろうが、やややりすぎだったと言えるかもしれない。。

 私がかつて文芸春秋社から「特命転勤」を出版したとき、政治部や整理部からしばしば「安倍晋三から何か言ってきただろう」と詰問された。「特命転勤」は私が毎日新聞経営企画室に在籍したとき携わった旧国鉄所有の国有地払い下げと大阪本社建設問題の内幕を書いたものである。その中で私は、私と国鉄担当者の間で決めた取引価格よりも5億円多い金額が当時の大蔵省(現財務省)から請求され、支払われていたことを知り、この5億円は政治家への謝礼金だと推測した。毎日新聞OBでもある安倍晋太郎から竹下昇蔵相へ、そしてその金が中曽根康弘元首相が設立した平和総研に寄付されてそれが竹下首相の誕生につながった、と推論したのである。毎日新聞社は公式に否定したが、政界では安倍晋三の言動が注目されていた。私への苦情がなかったことで、私の推論はそれほど間違っていないと認められたのである。

 いずれにせよ朝日の安倍批判はその後も続き、朝日の影響を受けたマスコミや知識人が安倍首相への攻撃を続けた。退陣表明後世界の多くの指導者たちが安倍首相の功績を称えるなか、朝日新聞は29日、30日と紙面の多くを割いて安倍首相在任中の負の遺産を特集している。またネットでも「ようやく退陣する。乾杯」といった書き込みがある。異常であり嘆かわしい。

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