関牧翁天竜寺管長

毎日新聞社に入社した私の最初の赴任地は京都だった。あとで聞くと入社試験の成績で振り分けられたようだった。支局員は23、4人と全国で一番大きな支局だった。特徴は、お寺回りという担当が2人もいることだった。入社したばかりの私の担当は御多聞にもれずサツ回りである。サツ回りは4人いて私の担当は西陣署、太秦署、北署だった。行政区画でいうと上京区、右京区、北区である。

午前中は各警察署を回って前日からの事件、事故を取材し支局に送稿、午後は町ネタ探しである。担当区域には多くの寺社仏閣、観光名所があった。そうしたところを訪ね歩いて町の話題を拾うのである。

私は公開されて間もない天竜寺をよく訪問した。すると関牧翁管長の居室に通される。老師はそのころ60歳を超えたばかりだったと思う。600年もの間非公開だったのを公開したわけと天竜寺のすばらしさを熱っぽく語り、あちこち案内してくれた。そして居間で煎茶を淹れてくださる。ときには抹茶も立ててくださる。

私が「作法をよく知らないので」とためらっていると「近頃、抹茶も煎茶も形式がどうのこうのとうるさい人が増えているけど、形式に拘らず自然にふるまうのがいいんです。万事自然に行動すれば間違いないです」と教えられた。天竜寺は心の落ち着く場所だった。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください